ぎっくり腰は、重い物を持ち上げたときや立ち上がったときなどに、突然強い腰痛が生じる状態の一般的な呼び方です。医学的には「急性腰痛」などと呼ばれます。
「朝起きたら急に腰が痛くなった」「物を持ち上げた瞬間に腰へ激痛が走った」「腰が痛くて立ち上がれない」「寝返りをするだけでも痛い」といった症状がみられます。
ぎっくり腰の多くは時間の経過とともに改善していきますが、すべての急な腰痛が単純なぎっくり腰とは限りません。腰椎椎間板ヘルニアや骨折、感染症などが隠れていることもあります。
当院では整形外科専門医が症状や身体所見を確認し、必要に応じてレントゲンなどの検査を行い、痛みの原因や重篤な疾患が隠れていないかを評価したうえで治療をご提案します。
ぎっくり腰(急性腰痛)とは
「ぎっくり腰」は正式な病名ではなく、突然生じた強い腰痛を表す一般的な呼び方です。
医学的には急性腰痛として扱われることが多く、腰の筋肉、筋膜、椎間板、椎間関節など、さまざまな組織が痛みに関係している可能性があります。
実際には診察や画像検査を行っても、痛みの原因となっている組織を一つに特定できないことも少なくありません。
大切なのは、単に「ぎっくり腰ですね」で終わらせるのではなく、神経症状や骨折など、別の疾患を疑う所見がないか確認することです。
ぎっくり腰の主な症状
突然腰に強い痛みが走る
重い物を持ったり、前かがみになったりした瞬間に強い腰痛が出ることがあります。
一方、明らかなきっかけがなく、朝起きたときなどに突然痛くなる場合もあります。
立ち上がると痛い
椅子やベッドから立ち上がる際に腰へ強い痛みが走り、ゆっくりでなければ動けないことがあります。
寝返りが痛い
寝返りや起き上がりなど、姿勢を変えるときに強い痛みを感じることがあります。
前かがみ・腰を伸ばすと痛い
腰を曲げたり伸ばしたりすることで痛みが強くなることがあります。
痛みを避けるため、腰を曲げた姿勢のまま動く方もいます。
ぎっくり腰の原因
ぎっくり腰には一つの明確な原因があるとは限りません。
重い物を持ち上げる
床にある荷物を持ち上げるなど、腰へ急激に負担がかかった際に発症することがあります。
前かがみ・ひねる動作
洗顔、靴を履く、物を拾う、身体をひねるなど、日常の何気ない動作をきっかけに痛みが出ることがあります。
スポーツや運動
ゴルフ、野球、筋力トレーニングなど、腰を大きく曲げる・伸ばす・ひねる動作によって急性腰痛を生じることがあります。
明らかな原因がない場合
「何もしていないのに突然痛くなった」というケースも珍しくありません。
必ずしも大きな負荷が加わったときだけ発症するわけではありません。
ぎっくり腰と腰椎椎間板ヘルニアの違い
ぎっくり腰
主な症状は腰の強い痛みです。
痛みの原因を一つの組織に特定できないこともあります。
腰椎椎間板ヘルニア
椎間板が突出し、神経を圧迫・刺激する疾患です。
腰痛だけでなく、
- お尻から足にかけての痛み
- 足のしびれ
- 足の筋力低下
などを伴うことがあります。
ただし、椎間板ヘルニアが急性腰痛をきっかけに見つかる場合もあるため、症状を確認することが重要です。
ぎっくり腰と坐骨神経痛の違い
ぎっくり腰では腰そのものの痛みが主症状となることが多い一方、坐骨神経痛ではお尻から足にかけて痛みやしびれが現れます。
「ぎっくり腰だと思っていたけれど、翌日から足まで痛くなってきた」という場合には、神経が刺激されている可能性があります。
ぎっくり腰は整形外科を受診した方がいい?
軽い急性腰痛で徐々に改善している場合には、必ずしも緊急の検査が必要とは限りません。
一方、強い痛みが続く場合や、通常とは異なる症状を伴う場合には整形外科での評価をおすすめします。
特に、
- 痛みが非常に強い
- 足まで痛い・しびれる
- 足に力が入りにくい
- 転倒後から腰が痛い
- 骨粗鬆症がある
- 発熱を伴う
- 安静にしていても強く痛む
などの場合には、単純なぎっくり腰以外の原因も考える必要があります。
ぎっくり腰の診察・検査
問診・診察
痛みが始まった状況や場所、どの動作で痛むのかを確認します。
また、
- 足の痛み・しびれ
- 筋力低下
- 感覚障害
- 発熱
- 外傷歴
- 骨粗鬆症の有無
- 排尿・排便異常
なども確認します。
レントゲン検査
すべてのぎっくり腰にレントゲンが必要というわけではありません。
骨折や骨の変形などを疑う場合には、症状や年齢、外傷歴などを考慮してレントゲン検査を行います。
MRI検査
足の強い痛みやしびれ、筋力低下などがあり、腰椎椎間板ヘルニアなどが疑われる場合にはMRI検査が有用です。
必要と判断した場合には、MRI撮影が可能な医療機関と連携します。
ぎっくり腰の治療
治療は症状の程度や原因によって異なります。
薬物療法
痛みの程度や全身状態などに応じて、消炎鎮痛薬や外用薬などを使用します。
コルセット
症状によっては、急性期にコルセットを使用することがあります。
ただし、すべての患者様に必要なわけではなく、長期間漫然と使用するものでもありません。
日常生活の調整
痛みが非常に強い時期には、無理な動作を避ける必要があります。
一方、痛みが許容できる範囲で、少しずつ普段の生活へ戻していくことも重要です。
ぎっくり腰は安静にした方がいい?
「ぎっくり腰になったら、何日も寝たきりにした方がいい」と思われることがあります。
しかし、重篤な疾患がなく、動くことが可能であれば、必要以上に長期間ベッド上で安静にし続けることは一般的には推奨されません。
強い痛みがある時期には無理をする必要はありませんが、痛みの許容範囲内で立つ、歩くなど、徐々に日常生活へ戻していきます。
ただし、神経症状や骨折などが疑われる場合には対応が異なるため、自己判断だけで無理に動く必要はありません。
ぎっくり腰にストレッチはした方がいい?
急性期の強い痛みがある状態で、無理に腰を伸ばしたりひねったりする必要はありません。
「ぎっくり腰にはこのストレッチ」と一律に考えるのではなく、痛みの状態に応じて対応することが重要です。
症状が落ち着いてきた後には、身体機能を評価したうえで運動療法を行うことがあります。
当院の運動器リハビリテーション
急性期の強い痛みが落ち着いた後も、腰痛を繰り返す方がいます。
その場合には「痛みがなくなったから終わり」ではなく、腰だけでなく身体全体を評価することが重要です。
当院では理学療法士が、
- 腰椎の動き
- 股関節の可動域
- 体幹機能
- 下肢筋力
- 筋肉の柔軟性
- 姿勢
- 仕事での身体の使い方
- スポーツ動作
などを症状に応じて評価します。
患者様の状態に合わせて運動療法や動作指導を行い、日常生活・仕事・スポーツへの復帰や腰痛再発の予防を目指します。
ぎっくり腰は何日で治る?
症状の程度や原因によって異なるため、「○日で必ず治る」とは言えません。
急性腰痛の多くは時間の経過とともに改善していきますが、数日で大きく改善する方もいれば、数週間症状が続く方もいます。
また、痛みが改善しない場合や徐々に悪化する場合には、ぎっくり腰以外の原因が隠れていないか再評価することが重要です。
ぎっくり腰を繰り返す場合
「毎年ぎっくり腰になる」「何度も同じような腰痛を繰り返している」という方もいます。
繰り返す腰痛では、急性期の痛みを抑えるだけでなく、
- 身体活動
- 筋力・柔軟性
- 仕事での姿勢や動作
- 運動習慣
- 睡眠
- 心理・社会的要因
など、さまざまな要素を確認することが大切です。
一つの「骨のゆがみ」だけを原因と考えるのではなく、腰痛を繰り返す背景を総合的に評価します。
このような症状は早めに受診してください
急な腰痛の中には、早急な評価が必要な疾患が隠れていることがあります。
特に、
- 転倒や事故の後から強く痛む
- 骨粗鬆症があり突然腰が痛くなった
- 発熱を伴う
- 安静にしていても強い痛みが続く
- 足の筋力が急に低下した
- 両足に強いしびれや脱力がある
- 股の周囲(会陰部)の感覚がおかしい
- 尿が出にくい、尿や便が漏れる
といった場合には注意が必要です。
特に排尿・排便障害、会陰部の感覚異常、進行する下肢筋力低下などがある場合には、馬尾症候群など緊急性の高い病態の可能性があるため、通常の外来予約を待たず速やかに医療機関を受診してください。
このような症状はご相談ください
- 突然腰が痛くなった
- 腰が痛くて立ち上がりにくい
- 朝起きたら腰が動かせない
- 寝返りをすると腰が痛い
- 重い物を持った瞬間に腰が痛くなった
- ぎっくり腰を何度も繰り返している
- 腰痛に加えて足が痛い・しびれる
- 仕事やスポーツにいつ復帰してよいか分からない
「いつものぎっくり腰」と自己判断せず、症状が強い場合やいつもと違う症状がある場合には一度ご相談ください。
当院の特徴
当院では、整形外科専門医・日本整形外科学会認定リハビリテーション医が急性腰痛を診察します。
単に「ぎっくり腰ですね」と判断するのではなく、神経症状や外傷歴などを確認し、腰椎椎間板ヘルニア、骨折など別の疾患が隠れていないかを評価します。
必要に応じてレントゲン検査を行い、MRIなどの精密検査が必要な場合には適切な医療機関と連携します。
急性期の治療だけでなく、腰痛を繰り返している方には理学療法士による運動器リハビリテーションを行い、仕事やスポーツへの復帰、再発予防までサポートします。
よくある質問
ぎっくり腰は何科を受診すればいいですか?
ぎっくり腰をはじめとした急性腰痛は、腰椎・筋肉・神経など運動器の問題が関係するため、整形外科で診察します。
ぎっくり腰は冷やす?温める?
一律に「必ず冷やす」「必ず温める」と決まっているわけではありません。ご自身が楽に感じる方法を選択することもありますが、低温やけどなどには注意してください。
ぎっくり腰は安静にした方がいいですか?
強い痛みがあるときに無理をする必要はありませんが、重篤な疾患がなく動ける場合には、長期間のベッド上安静を続けるより、痛みの許容範囲内で徐々に日常生活へ戻ることが一般的に勧められます。
ぎっくり腰でレントゲンは必要ですか?
すべての急性腰痛にレントゲンが必要とは限りません。年齢、外傷歴、症状、診察所見などから骨折などが疑われる場合に検討します。
ぎっくり腰とヘルニアは同じですか?
同じではありません。ぎっくり腰は急に生じた腰痛を表す一般的な呼び方で、腰椎椎間板ヘルニアは椎間板が突出して神経を圧迫・刺激する疾患です。
ぎっくり腰は繰り返しますか?
繰り返す方もいます。痛みが改善した後に身体機能や生活・仕事での動作などを評価し、適切な運動を継続することが再発リスクを減らすために重要です。
監修医
平田 寛明
高槻整形外科・再生医療クリニック 院長
日本再生医療学会認定医
医学博士
日本整形外科学会認定 整形外科専門医
日本整形外科学会認定 スポーツ医
日本整形外科学会認定 リハビリテーション医
Accurian® 末梢神経ラジオ波焼灼療法 認定医
Coolief® 末梢神経ラジオ波焼灼療法 認定医
スポーツ障害から変形性関節症まで幅広い運動器疾患を診療しています。患者様一人ひとりの症状や生活背景に合わせ、保存療法・運動器リハビリテーション・再生医療などから適切な治療をご提案しています。
本ページは医学的知見および実際の診療経験に基づいて作成し、内容を定期的に見直しています。
突然の腰痛・ぎっくり腰でお困りの方へ
「突然腰が痛くなった」「腰が痛くて立ち上がれない」「ぎっくり腰を繰り返している」といった方はご相談ください。
急性腰痛の多くは改善していきますが、重要なのは「ぎっくり腰」という言葉だけで判断せず、神経障害や骨折など別の原因が隠れていないかを確認することです。
当院では整形外科専門医が診察し、急性期の治療から、必要に応じた運動器リハビリテーション、仕事・スポーツへの復帰までサポートします。
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